前期(2023.10 - 2025.9)に引き続き、今期(2025.10 -)学会長を引き受けることとなりました熊谷です。よろしくお願い申し上げます。
国際紛争や戦争の終結には先行きが見えず、その真只中にある地域での戦禍はますます悲惨なものとなり、人々の日々の暮らしや生命を脅かしています。グローバルな世界にあり、それは遠い他国の出来事ではなく、私たちの身近な暮らしにも大きな影響を与えているところです。
先般(2026年3月13日)、厚生労働省医政局長より「医療ソーシャルワーカー業務指針」が最終改訂から20年以上経ち改訂の発出がされました。冒頭の「趣旨」において「医療現場においては、生活困窮、孤独・孤立、依存症、自殺企図、虐待、災害等の生きづらさにつながる様々な課題が顕在化している。こうした中、入院・外来、在宅医療を提供する医療機関等において、社会福祉の立場から、患者の療養上の様々な課題解決のための調整や支援を行い、社会復帰の促進を図る「医療ソーシャルワーカー」の役割は多岐にわたり、その支援の幅と質の双方が求められている。」としています。保健医療分野のソーシャルワーカーは他領域のソーシャルワーカーと同様に「社会福祉の立場から」ますます制度の狭間にある人々や社会的つながりの弱い人々の意思や人権を支援していくことが求められているといえます。
本学会の目的は「保健医療分野の研究者及びソーシャルワーカーが協働することにより、ソーシャルワークの実践及び普及並びに社会福祉学の進展を図り、もって保健医療における国民の福祉の向上に寄与すること」としています。1991年の学会設立に多大なる尽力を頂いた故山手茂初代会長や法人化に尽力頂いた故岡本民夫元会長はじめ多くの先達により、その時々の保健医療における社会福祉に関連する出来事、たとえば医療ソーシャルワーカーの資格化や医療ソーシャルワーカー業務指針、阪神・淡路大震災などに俊敏に対応されてきております。また現在においてもその志を継承すべく、その時々の時宜に応じたテーマを取り上げた毎年の学術集会やセミナーの開催、学会誌の刊行、大規模災害支援などの取り組みを進めています。とりわけ2022年12月発行の本学会編「医療ソーシャルワーカー関係資料集成」は、「医療ソーシャルワーカーの戦前からのルーツを確認するために、また戦後の保健医療制度で医療ソーシャルワーカーがどのように位置づけられてきたかについて、政策・制度史の視点からの資料」(刊行の辞抜粋)が集成されています。本集成は本学会において2013年に事業化され、編集委員も交代しながら10年を経て発刊に至ったものです。わが国の保健医療における社会福祉学の研究・実践がさらに深化を遂げるための貴重な資料であることを確信しています。
本学会の志と事業を継承しつづけるためにもさらに多くのソーシャルワーカーや関係領域の研究者の参画を期待しております。